広南病院脳神経外科 中里信和


MEGによる機能マッピング〜これは基本・これは応用〜(29分34秒)


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【はじめに】脳磁図は脳内電流を磁界として計測する検査法で,脳波とは異なり頭部導電率の不均一性による影響が小さく,信号源の高い推定精度が期待できる.脳波と同様,高い時間分解能を持ち,時系列で機能をマッピングできる.近年,大型脳磁計が普及しつつあるものの,計測や解析方法は脳波ほどには確立されておらず,施設間のデータの比較も容易ではない.ここでは誘発脳磁界における基本と応用を整理して論ずる.
【体性感覚誘発磁界(SEF)】脳波と同様,正中・後脛骨の各神経の電気刺激による検査は基本である.皮質第1波(N20m・P38m)の信号源は,単一電流双極子モデルで数mmの誤差で推定でき,中心溝後壁の一次体性感覚野に起源を持つことが示されている.しかし第2波以降の成分や,二次体性感覚野由来の反応に関しては議論も多い.手指・耳介・舌・口唇・体幹・泌尿生殖器等の領域同定には,刺激装置の工夫が必要である.
【聴覚誘発磁界(AEF)】トーンバースト等の刺激によるN100m反応は振幅が大きく信号源推定を行ないやすく,左右差等の潜時の正常値も確立されている.しかし起源は,聴覚野のうちHeschl gyrusなのかplanum temporaleなのかさえ不明である.より早い成分に関しては施設ごとの結果が異なり,臨床データの施設間比較はいまだに困難である.
【視覚誘発磁界(VEF)】視覚野も一次からより高次の視覚野に情報が伝達される.驚くべきことに過去の報告では高次視覚野に関する報告が多く,基本である一次視覚野を同定し,これとの比較で高次視覚機能を論じた研究は少ない.われわれのパターン反転刺激P100m反応を中心とした一次視覚野由来の反応の臨床応用について紹介する.
【おわりに】MEGを用いた誘発反応による機能マッピングを臨床で活用するためには,計測・解析方法の詳細に関する施設間の情報交換をさらに活発化すべきである.