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ポルトガルの料理とワインを前にして

「ポルトガルの魚とワインは好きかい」

 ポルトガルでの旅も終わりに近づき、翌日にはいよいよスペイン
に入国しようという国境近くの町、エルヴァスにさしかかった時のこ
と。
 レストランの庭先にテーブルを出し夕食を楽しんでいた10人ほど
の一団より声がかかった。

「おおい。ポルトガルの魚とワインは好きかい」
という声である。一も二もない。「もちろん」と答えて近づいていくと、
イワシの炭焼きをはじめ数々の料理の並んだテーブルの前に私の
ための椅子が用意され、目の前のグラスにはワインがなみなみと
注がれた。

 やった。ラッキー。こういうのを待ってたんだ。ほとんどいつも飢え
ていた私はここぞとばかり目の前の料理をたいらげ、ワインを飲み、
日本人のハングリーなところを見せつけにかかった。

 一同のうち英語が話せたのは、私に声をかけたジョセ一人で、主
に彼と話をしながら食事にいそしむ。彼らにとっては日本などという
遠い世界から来ていることだけでも珍しいのに、その上私がリスボ
ンから歩いてきたことを知ると皆は一様に驚き、世の中には物好き
もいるもんだとあきれたような顔をしている人が多かった。中には、
それを聞いて握手を求めてくる人もいたが。

 そんな会話を交わすうち、その晩はジョセの家に泊めてもらうこと
になった。宴会が終わって彼の家に着く頃にはあまり急激にいろん
な物を腹に詰め込みすぎたのと、ワインの飲み過ぎとで、幾分気持
ち悪いくらいだった。

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