2002年改訂
日本動脈硬化学会の高脂血症ガイドライン試案
上記は、日本動脈硬化学会が1997年に提唱した高脂血症の診断基準及び治療指針であるが、このたび2001年6月7日、
東京で開催された第33回日本動脈硬化学会で新しい高脂血症ガイドラインが提唱された。
これは,日本人約55人を対象として6年間にわたり実施されたシンバスタチンを使用した
大規模臨床研究「J-LIT」(Japan-Lipid Intervention Trial)の研究成果に基づいて作成されたもので,現時点では未だ試案の段階であるが、
さらに検討を重ねて,年内に決定される見込みである。
この試案においては、「スクリーニングのための高脂血症診断基準値」を設定し、
各人における「冠動脈疾患の有無」および「冠動脈疾患危険因子」の保有数により高脂血症患者を6群に分類し、
各群に応じた「血清脂質管理目標値」および「相対リスク」を示している。
1) スクリーニングのための高脂血症診断基準値
高脂血症 | 基準値(mg/dl) | |
---|---|---|
コレステロール | 高コレステロール血症 | ≧240 |
境界域高コレステロール血症 | 220~239 | |
LDL-コレステロール | 高LDLコレステロール血症 | ≧160 |
境界域高LDLコレステロール血症 | 140~159 | |
HDL-コレステロール | 低HDLコレステロール血症 | <40 |
中性脂肪 | 高中性脂肪血症 | ≧150 |
2) 患者カテゴリー別管理基準
患者カテゴリー | 血清脂質管理目標値(mg/dl) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
分類 | 冠動脈疾患<の 有無 | 危険因子* | 相対 リスク |
総 コレステロール | LDL | HDL | 中性脂肪 |
A | - | 0 | / | 240 | 160 | ≧40 | <150 |
B1 | - | 1** | x1 | ||||
B2 | 2 | x3 | 200 | 120 | |||
B3 | 3 | x6 | |||||
B4 | 4 | x12 | 180 | 100 | |||
C | + | / | x24 |
3.高脂血症の治療
A.食事療法
1) 高コレステロール血症の食事療法
-
コレステロール摂取量を300mg/日以下にする。
日本人は一般に食事としてコレステロール300~500mg/日を摂取していると言われている。下記の表を参考にして、コレステロール含量が多い食品はとりすぎないようにする。 - 飽和脂肪酸:不飽和脂肪酸の比を1:1~1:2とする。
- 穀類、豆類、野菜、海草,キノコ類などを多く摂取する。
各種食品中のコレステロール含量(mg/dl)
A.貝類
- しじみ
- 125
- 赤貝
- 78
- あさり
- 76
- はまぐり
- 69
- かき
- 7
B.頭足、甲殻類
- まだこ
- 139
- するめいか
- 180
- もんごいか
- 123
- あしあかえび
- 156
- たいしょうえび
- 132
- くるまえび
- 164
- たらばがに
- 53
- まつばがに
- 72
C.卵類
- にわとり(黄身)
- 1030
- (白身)
- 0
- うずら(黄身)
- 950
- (白身)
- 0
- あひる(黄身)
- 740
- (白身)
- 0
- たらこ
- 445
- すずこ
- 485
- かずのこ
- 225
- たいのこ
- 345
- たいのしろこ
- 338
D.肉類
- 牛 (ロース)
- 54
- (並肉)
- 68
- 豚 (ロース)
- 66
- (並肉)
- 69
- 鶏 (もも)
- 114
- (てば)
- 63
- (きも)
- 391
- (すなずり)
- 175
- 羊
- 58
- 鯨
- 62
E.肉加工品
- ハム(ロース)
- 59
- (A)
- 54
- (B)
- 48
- (C)
- 41
- 焼き豚
- 4
- ベーコン
- 53
- コンビーフ
- 40
- ソーセージ
- 47
F.魚類
- はも
- 53
- まぐろ
- 50
- たい
- 52
- はまち
- 56
- かつお
- 64
- ひらめ
- 60
- いわし
- 85
- たちうお
- 68
- あじ
- 38
- かれい
- 41
- めばる
- 72
- さば
- 57
- きす
- 150
- いさき
- 79
- べら
- 61
- いとより
- 76
- かます
- 79
- さんま
- 99
- さけ
- 62
- ししやも
- 262
- しらさぎ
- 131
- うなぎ
- 122
- あゆ
- 137
- 鯉
- 65
- 鮒
- 52
- もろこ
- 212
G.魚肉加工品
- かまぼこ
- 41
- 竹輪
- 19
- てんぷら
- 49
- あんぺい
- 17
- あつやき
- 136
- そーせーじ
- 30
H.油脂類
- チーズ
- 100
- バター
- 220
- マーガリン
- 60
I.乳製品
- クリーム
- 65
- ヨーグルト
- 8
- 牛乳
- 10
コレステロールが多い食品、少ない食品
コレステロールが多い食品
- 卵黄
- 卵類(すじこ、たらこ、数の子、白子、等)
- 生クリーム
- バター、ラード、マヨネーズ
- もつ類(牛レバー、鶏もつ、豚レバー)
- 菓子類(カステラ、バームクーヘン、エクレア、クッキー、等)
- 魚介類(うなぎ、わかさぎ、めざし、ししやも、あなご、いか、するめ、うに、たこ、えび、あさり、しじみ、はまぐり、しらすぼし、ほたて貝)
コレステロールが少ない食品
- 卵白
- 牛乳、ヨーグルト
- 植物油(サラダ油)
- 穀類、芋類、野菜類、果物、海草類
- 豆類(豆腐、高野豆腐、納豆、小豆、など)
- 魚類(たら、かれい、ひらめ、すずき、等)
各種の油脂の脂肪酸組成(%)
油脂の種類 | 飽和脂肪酸 | 一価不飽和脂肪酸 | 多価不飽和脂肪酸 |
---|---|---|---|
ベニバナ油 大豆油 とうもろこし油 綿実油 ごま油 米ぬか油 菜種油 落花生油 オリーブ油 カカオ・バター |
12.0 13.5 11.3 23.0 12.3 20.0 7.0 17.0 10.0 57.0 |
8.0 28.5 46.3 28.6 48.1 45.0 17.0 61.0 83.0 41.0 |
80.0 58.0 41.8 47.2 38.6 34.0 25.0 22.0 7.0 2.0 |
クルミ カヤの実 松の実 大豆 |
5.1 9.0 5.0 11.2 |
17.6 - 74.1 33.4 |
76.0 72.0 20.0 53.8 |
鶏脂 卵黄 豚脂 牛脂 バター |
26.0 33.0 45.0 60.0 64.0 |
52.0 50.0 40.0 33.0 29.0 |
17.0 11.0 10.0 2.0 4.0 |
2) 高中性脂肪血症の食事療法
-
標準体重維持
標準体重=身長(m)×身長(m)×22
摂取カロリー量=標準体重×(25~30)kcal - アルコール減量:酒(1合)、ビール(大1本)、ウイスキー(シングル3杯)以内
- 摂取脂肪については不飽和脂肪酸の割合を多くする
B.高脂血症の薬物療法
高脂血症の種類 | 第1選択薬 | 第2選択薬 |
---|---|---|
高コレステロール血症 | メバロチン、リポバス | ロレルコ、シンレスタール、 コレキサミン、ベザトールSR |
高中性脂肪血症 | ベザトールSR | メバロチン、コレキサミン |
両者の合併 | メバロチン+ベザトールSR | ロレルコ、シンレスタール |
C.高脂血症の運動療法
- 運動療法の実施法
- 速度:80~100m/分、100~130歩・分(万歩計)
- 距離:3km/日(1日30~40分)、20km/週
- 運動量の増量:1日10分から始め、2~3日毎に10分ずつ増加し、10~20週かけて目標値に達する。
- 運動中の心拍数が120/分を越えないようにする。
- 運動療法の効果:平均年齢43歳の男性、3~4週の運動で下記の如き効果が得られている。
総コレステロール (mg/dl) | LDL (mg/dl) | HDL (mg/dl) | 中性脂肪 (mg/dl) | |
---|---|---|---|---|
運動前 | 254 | 172 | 48 | 169 |
20km/週以内の 運動量 | 249 | 168 | 49 | 161 |
20km/週以上の 運動量 | 227* | 147* | 55* | 140** |
*p<0.05, **p<0.01