日本糖尿病学会による血糖コントロール評価指針
糖尿病は固有の合併症である細小血管症(網膜症、腎症、神経症)や動脈硬化症を予防するためにも、良いコントロール状態に保つことが大切である。 2002年5月発行の日本糖尿病学会編「糖尿病診療ガイド2002-2003」には下表のような評価基準が掲載されている。
血糖コントロールの指標と評価
評価項目 | 有(excellent) | 良(good) | 可(fair) | 負荷(poor) |
---|---|---|---|---|
HbA1c(%) | 5.8未満 | 5.8-6.4 | 6.5-7.9 | 8.0以上 |
空腹時血糖値 (mg/dl) | 100未満 | 100-119 | 120-139 | 140以上 |
食後2時間血糖値 (mg/dl) | 120未満 | 120-169 | 170-199 | 200以上 |
HbA1c値は患者の平均血糖値を示す指標であり各個体では変動幅が少ない。糖尿病コントロール、患者の自己管理の第1選択指標である。 しかし、HbA1cでは血糖値の日内変動などの状況は把握できず、また血糖以外のHbA1c測定値を変動させる因子も少なくない。 空腹時血糖値、食後2時間血糖値、随時血糖値などを併用して代謝状態を総合的に判断することが望まれる。
上の表におけるコントロール指標のHbA1c値と血糖値との相関性は、個人差、日内変動が複雑なことから厳密なものではない。 生活指導、薬物療法によってもコントロール不可の場合(HbA1c値 8.0以上、空腹時血糖値 140mg/dl以上、食後2時間血糖値 200mg/dl以上)が改善されず、 3か月以上続く場合には専門医に紹介するか専門医の助言を受ける。
その他のコントロール指標
1) 体重
標準体重(kg)=(身長m)×(身長m)×22
BMI(Body Mass Index)=体重(kg)/〔(身長m)×(身長m)〕
BMI=22が最も長命であり、かつ有病率が少ない。従って、BMI=20~24を目標とする。 しかし、BMIが20を下回っても、積極的に体重増加を図らなくとも良い。
BMIが25以上の場合を肥満とする。肥満の人はまず24以下を目標として体重減少を図り、達成後は20歳時の体重を目標にするなど、個人の体重変化の既往、身体活動量などを参考にして定める。
2) 血圧
収縮期血圧 130mmHg未満
拡張期血圧 85mmHg未満
血圧測定は通常座位で5分ほど安静を保った後に測定する。糖尿病の自律神経障害を持つ例では、測定の体位により血圧値が異なる。 立ちくらみなどの訴えがある場合には、体位による血圧変動の有無を必ず検討する。
3) 血清脂質
項目 | 目標値 |
---|---|
総コレステロール | 200mg/dl未満 |
中性脂肪 | 150mg/dl未満(早朝空腹時) |
HDL-コレステロール | 40mg/dl以上 |
LDL-コレステロール | 120mg/dl未満 |
4) 合併症有無の検査 (註を参照)
〔註〕 詳細については「日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイドライン2002-2003、文光堂、東京、2002」を参照されたい。
文光堂への連絡:TEL 03-3813-5411