肥満度測定
- 体脂肪計
- 身体計測装置
1.肥満とは
肥満を評価するのに古くから体重が良く用いられてきました。しかし、厳密には肥満は体内における脂肪量の増加を言います。 体重には、脂肪の他に、筋肉、骨格、内臓なども含まれており、必ずしも適切な肥満の評価法とは言えません。 そのため、最近は、肥満の評価法としてBody Mass Index(BMI)という指数が世界的に広く用いられています。BMIは下式により求められます。
BMI = 体重(kg) / 身長(m)2
2.標準体重とは
BMIが広く用いられるようになった理由の1つに、BMIが疾病率(病気にかかり易さ)と密接な関係があることがあきらかとなったことがあげられます。 下の図はBMIと疾病率との関係を見た図です。男女共に、BMIが22のところで疾病率が最も少なくなっています。 つまり、BMIが22のところが病気を持たない健康な人が最も多いことを示しています。このような傾向は世界中の多くの國で認められています。 従って、標準体重(理想体重)とは、BMIが22となるような体重であり、下式により求めることが出来ます。
標準体重(理想体重)=身長(m)2 × 22
BMIが22を越えると、糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞、痛風などのいわゆる生活習慣病が増加します、他方、22以下では消化器疾患、胃腸病、結核などが増加します。
BMIと疾病率との関係
男性ではBMI 22.2、女性では21.9と、何れも22の近辺で最も疾病率が低い。
3.生活習慣病の危険因子としての肥満
肥満は、脳梗塞、糖尿病、心筋梗塞・狭心症などの生活習慣病の重要な危険因子の1つであることは広く知られています。 肥満に合併しやすい疾患としては次の表の様なものがあります。
- 内分泌・代謝系
- 糖尿病、高脂血症、痛風
- 循環器系
- 虚血性心臓病、心肥大、高血圧、動脈硬化症、下肢静脈瘤
- 呼吸器系
- 肺胞換気障碍、睡眠時無呼吸症候群
- 消化器系
- 脂肪肝、胆石症、胆嚢炎、膵炎
- 運動器系
- 変形性関節症、腰痛、下肢痛
- その他
- 湿疹、多汗症、月経異常、妊娠・分娩合併症、耳下腺腫大
4.内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満
肥満は、単に体重増加ではなく、脂肪の体内蓄積である事が明らかになりましたが、体脂肪の蓄積場所により内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満に分類されています。 下図は臍のレベルでの腹部CT写真で、両者の相違がよく分かります。 この内臓脂肪型肥満では、皮下脂肪型肥満に比べて高血圧、高脂血症、糖尿病、高尿酸血症などの代謝性疾患が高率に出現します。
左:皮下脂肪型肥満、右:内臓脂肪型肥満
最下段の黒三角形は代謝異常の合併率を示す。
内臓脂肪型肥満、皮下脂肪型肥満には下表のような諸種の呼び名があります。
内臓脂肪型肥満 | 皮下脂肪型肥満 |
---|---|
上半身肥満 | 下半身肥満 |
腹部肥満 | 腹部・大腿部肥満 |
男性型肥満 | 女性型肥満 |
リンゴ型肥満 | 洋梨型肥満 |
悪性肥満 | 良性肥満 |
内臓型肥満か皮下脂肪型肥満かを区別するのに、ウエスト/ヒップ比(W/H比)が役立つ事賀報告されています。 W/Hの正常平均値は0.7で、これが0.85以上になると生活習慣病が多くなることが知られています。
5.体脂肪計による脂肪率の計測
内臓脂肪の増加を知る方法として、脂肪計による体脂肪率の評価法があります。
体脂肪率の正常値は下表の如くです。
正常値(%) | 肥満(%) | ||
---|---|---|---|
30最以下 | 30歳以上 | ||
男性 | 14~20 | 17~23 | 25以上 |
女性 | 17~24 | 20~27 | 30以上 |
6.肥満の治療
1) 食事療法
肥満の治療の目的は、標準体重を維持することです。
そのためには、標準体重をもとにして、その人の仕事量に応じた必要カロリー量を計算で求め、摂取カロリー量をその範囲に抑えることです。
標準体重は、先に示したようにBMIに基づいて定めます。
標準体重1kg当たりの必要カロリー量(kcal)は下表の如くです。
対象(仕事量) | 必要カロリー(kcal) | 対象 | 必要カロリー(kcal) |
---|---|---|---|
安静状態、高年者 | 20~25 | 成人肥満者 | 20~25 |
軽労作 | 25~30 | 肥満妊婦 | 1,200 kcal |
普通の労作 | 30 | 妊娠前期 | +150 kcal |
やや重い労作 | 35 | 妊娠後期 | +350 kcal |
重い労作 | 40 | 授乳期 | +720 kcal |
体重調節の際には、摂取カロリー量と消費カロリー量の差が問題となる。 一般的に言って、カロリー摂取は容易であるが、カロリー消費はなかなか困難で、努力を要する。下図は両者の関係を示します。
カロリー摂取とカロリー消費との関係
ケーキ1個とまんじゅう1個は約200kcalです。またジュース2杯も約200kcalです。
こくらいの量を食べるのは極めて容易ですが、200kcalを運動により消費しようとすると80分間歩かねばなりません。
もし、これだけの運動をしないで、摂取カロリーのみ増加しますと、その分が体内に蓄積し、1カ月このような生活が続くと体重は1kg増加します。
1年間では体重は約10kg増加することになります。
各種アルコール飲料のカロリーを下の表に示します。
種類 | 単位 | アルコール含量(g) | カロリー(kcal) | ||
---|---|---|---|---|---|
清酒 | 1級 | 1合 | 180ml | 22.9 | 114.5 |
ビール | 大 | 1本 | 630ml | 22.7 | 113.5 |
ワイン | 1杯 | 60ml | 5.7 | 28.5 | |
焼酎 | 35度 | 1合 | 180ml | 50.0 | 250.0 |
25度 | 35.8 | 179.0 | |||
20度 | 28.6 | 143.0 | |||
ウイスキー | 1級 | ダブル | 60ml | 19.1 | 95.5 |
ブランデー | 1級 | ダブル | 60ml | 20.0 | 100.0 |
2) 運動療法
しかし、カロリー制限だけでは体重調節は永続的効果を示しません。適当な運動との併用が大切です。下に体重調節のための運動療法の指針を示します。
- 運動種目
- ラジオ体操、散歩、ジョギング、自転車、水泳など
- 運動強度
-
最大運動強度の50%前後を目標とする(脈拍数により評価)
20~30歳代: 130/分
40~50歳代: 120/分
60~70歳代: 110/分
- 運動持続時間
- 10~30分
- 運動頻度
- 3回以上/日
3) 薬剤療法
肥満の調節には食事療法と運動療法が中心になります。しかし、これらの方法で治療困難な高度の肥満例には薬剤を使用することがあります。 そのような薬剤としてはマジンドール(商品名サノレックス)があります。
- 作用機序
- 視床下部の食欲中枢を抑制する
- 適応
- BMI>35、または肥満度>70%
- 投与方法
- 3週投与後、一時休薬。投与期間は3月以内
- 効果
- 3カ月投与で5kg減量可能
- 副作用
- 口渇、便秘、悪心