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当院実施の各種検査の意義

トレッドミル運動負荷試験(運動負荷心電図)

1.虚血性心臓病とは

トレッドミル運動負荷試験は、虚血性心臓病の診断に重要な役割を果たす検査法です。 それで、まず虚血性心臓病とはどのような病気であるかについて説明します。
心臓は主として筋肉(心筋)で構成され、その収縮により血液を全身に送り出すポンプとしての機能を果たしております。 そのような重要な仕事をするもととなるエネルギー(酸素、栄養素)は冠動脈と言う動脈により供給されています。
冠動脈は、大動脈が心臓から出て直ぐに左右に1本づつ分枝しています(左冠動脈、右冠動脈)。 この動脈は心臓の表面をはちまき状に取り囲んでいますので、冠動脈(冠:かんむり)と呼ばれるようになりました。
この冠動脈に動脈硬化がおこり、内腔が著しく狭くなると(75%以上狭窄)、冠動脈を介して心筋に与えられる酸素が不足します(冠不全)。 このように心筋への血流が少ない状態を心筋虚血と言います。 冠不全は、心筋の仕事量に見合った酸素が供給されない場合、すなわち「心筋における酸素の需要と供給の不均衡」の際に見られます。
狭心症は冠不全の臨床的表現です。心筋梗塞は、冠動脈が閉塞し、血流が途絶した際に起こります。 このように、狭心症、心筋梗塞は、冠動脈の動脈硬化の結果、心筋虚血に陥って発症しますので、虚血性心臓病と呼ばれます。

下図に冠動脈の走向と心筋梗塞を示します。

下図は動脈硬化(アテローム硬化)を起こした冠動脈の断面を示します。 一般に、冠動脈は内腔が75%以上狭くならないと冠不全を起こさないと言われていますので、 左端の病変(A)では、未だ狭心症は起こりませんが、中央(B)の病変では狭心症が起こります。又、右端(C)の病変では心筋梗塞が起こります。

2.運動負荷試験の必要性

通常、心電図は安静横臥位で記録されます。しかし、安静時には酸素消費が少ないので、冠動脈硬化があっても冠不全は出現しません。 そのため、臨床的には典型的な狭心症の痛みがあるにもかかわらず、安静時心電図は50%の例では正常所見を示し、何等冠不全所見を示しません。 だから、安静時心電図に以上がないからと言って、狭心症でないと言うことは出来ません。
このため、運動を負荷して、酸素消費を増加させて心電図を記録することが狭心症などの虚血性心臓病の診断に必要になります。

3.トレッドミル負荷試験の運動負荷心電図法としての優秀性

従来、運動負荷試験としてはマスター2階段試験が広く用いられてきました。Masterとは、此の方法を開発した研究者の名前です。 マスター2階段試験では、下図に示すような階段を年齢、性、体重に応じて定められた一定回数でき1分半の間に上下し、 その負荷前後の心電図を比較し、冠不全所見が出現するかどうかを調べます。


マスターの2階段(各9インチの高さの2段の階段)

しかし、この方法では運動負荷量が著しく少ないため、2倍の回数を3分間に上下する方法が広く用いられるようになり、 マスターの二重負荷試験(Double Master Two Step Test)と呼ばれています。 この方法では、若干、被検者による負荷量の調節を行っていますが、その人の呼吸機能、代謝機能などに応じた負荷量の調節は行われていません。
トレッドミル負荷試験やサイクロエルゴメーター負荷試験(自転車エルゴメーター)では、最大酸素摂取量を考慮して、 危険がない範囲で出来るだけ多くの負荷を加えるように負荷量がさだめられており、また負荷中も脈拍、呼吸、血圧、心電図などがモニターされるため、安全に負荷試験を実施することが出来ます。

下図は運動負荷試験陽性の狭心症例の心電図を示します。本例は左冠動脈主幹部に75%狭窄がありました。


負荷前の心電図では不明瞭であるが、負荷後には明瞭な心電図異常を認める。

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