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当院実施の各種検査の意義

脳ドック

CT、MRIが広く臨床で用いられるようになり、画像診断精度が著しく向上しました。 従来は診断が極めて困難であった脳、肝臓、膵臓などの実質臓器の内部構造の異常が容易に把握できるようになりました。
そのため、従来は診断できなかった小さい脳梗塞や未破裂脳動脈瘤などもこのような方法で診断できるようになりました。 脳動脈瘤が破裂した際の死亡率は50%と著しく高率です。また、急性脳卒中発作が無く、 たまたま脳CT、脳MRIなどを撮影して脳梗塞を発見される無症候性脳梗塞は、脳梗塞の重要な危険因子と考えられています。
従って、脳ドックによって未破裂脳動脈瘤を発見して適切な治療を行ったり、無症候性脳梗塞の存在に気付いてライフスタイルを改善し、 脳梗塞の大きい発作の発現を未然に予防することは極めて大切なことであると言えます。

1.脳血管障害の分類

脳梗塞ラクナ梗塞
アテローム血栓性脳梗塞
心原性脳塞栓
頭蓋内出血脳出血
くも膜下出血
硬膜下血腫
1) ラクナ梗塞

脳表面の血管から脳実質内に穿通する細い動脈の閉塞により生じまする(ラクナ:小孔、空隙)。 無症候性脳梗塞には、この型の病変が多く見みられます。

2) アテローム血栓性脳梗塞

大動脈、頸動脈、椎骨動脈およびその分枝の動脈硬化(粥状硬化)に基づく脳血流不全、あるいはこれらの動脈の狭窄部に生じた血栓が剥離して脳血管を閉塞することによりおこります。

3) 心原性脳塞栓症

心房細動などの不整脈、急性心筋梗塞時に生じた左室壁在性血栓が剥離して血流により脳に運ばれて脳梗塞を生じます。

4) 脳出血

高血圧を基礎疾患として脳内の細動脈系に動脈瘤を生じ、これが破れて脳内出血を起こします。

5) くも膜下出血

脳底動脈、ウイリス動脈輪の動脈壁の発育不全のために動脈瘤を生じ、これが破れて「くも膜下腔」に出血します。

6) 硬膜下血腫

外傷により硬膜の内側に出血して脳組織を圧迫し、局所神経症状、痴呆症状などを示します。本人が覚えていない程度の軽い外傷で生じる場合もあります。

 

下図に脳膜の構造を示します。

3.くも膜下出血

1) 原因

脳動脈瘤の破裂による場合が大部分ですが(90%)、脳動静脈奇形によるものも10%あります。

2) 動静脈奇形

動静脈奇形とは、動脈と静脈が毛細血管を介さず、直接結合する奇形で、高い動脈圧が直接に静脈系にかかりますので出血を起こしやすくなります。

3) くも膜下出血の症状と予後

未だ経験したことがない激しい頭痛、嘔吐で突発します。初回発作による死亡率は30%、多くは24~48時間以内に死亡します。 多くの例では、初回発作から数日以内(ことに24時間以内)に再発しますがが、再出血時には高い死亡率を示します。

4) 脳動脈瘤の頻度と予後
脳動脈瘤保有率2%
脳動脈瘤の破裂率2%
脳動脈瘤破裂時の死亡率50%
脳動脈瘤破裂時の自然治癒率25%
脳動脈破裂時の後遺症残存率25%

4.無症候性脳梗塞

1) 無症候性脳梗塞の年齢別頻度
年齢層頻度(%)
30歳代4.3
40歳代5.0
50歳代8.3
60歳代18.1
70歳代32.0
2) 無症候性脳梗塞の成因
  1. 梗塞病巣が小さい場合
  2. 非優位側の脳に病変がある場合
  3. 比較的症状を起こし難い部位に病変がある場合(皮質下白質、基底核、小脳など)
  4. 睡眠中に発症した場合
  5. 高齢者
  6. 脳塞栓で、早期に栓子が自然融解した場合
  7. 長期の血流不全があり、副血行路がよく発達している場合
3) 無症候性脳梗塞の意義
  1. 脳卒中初発予防の警告:40~60歳代の脳卒中未経験者で発見された無症候性脳梗塞は、すべて治療が必要です。 また、MRA、SPECTなどの検査で、脳血流、血管閉塞の有無につての検討が必要です。
  2. 脳血管障害性痴呆への進展の危険性:視床、内包前脚・膝・尾状核などの多発性傷害は危険です。
4) 無症候性脳梗塞例における他の危険因子保有率
他の危険因子保有率(%)
高血圧19.8
高脂血症6.8
糖尿病6.3
喫煙6.7
血液ヘマトクリット高値2.9
脳卒中の家族歴14.3
5) 無症候性脳梗塞の治療
  1. 40~60歳代の脳卒中未経験者はすべて治療が必要である
  2. ライフスタイルの改善: 禁煙、低Na食、ストレス対策、食生活改善
  3. 危険因子の検討と治療:高血圧、高脂血症、血小板凝集能亢進、血清フィブリノーゲン高値、糖尿病、喫煙、肥満など
6) 脳血栓の危険因子
  1. 一過性脳虚血発作
  2. 高血圧
  3. 動脈硬化症状(狭心症、心筋梗塞,間欠性跛行など)
  4. 糖尿病
  5. 高脂血症
  6. ヘマトクリット高値
  7. 喫煙
  8. 高尿酸血症

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