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当院実施の各種検査の意義

免疫学的ヒト潜血反応(大腸癌検診)

1.免疫学的便潜血反応

大便中に含まれる微量の血液を検出することにより、大腸癌のスクリーニングを行う方法が便潜血反応検査です。 このためには、ヘモグロビンのペルオキシダーゼ作用を利用した従来からある方法と、最近開発された免疫学的にヒト・ヘモグロビンを検出する方法があります。
前者では、検査に先だって一定の食事制限を行う必要があり、また下部腸管のみならず、上部消化管からの出血でも陽性に出ることがあり、信頼性が不十分でした。 これに対し、免疫学的潜血反応では、ヒト赤血球中のヘモグロビンに特異的に反応するため、検査前に何らの食事制限を必要とせず、 下部消化管からの出血を特異的に検出することが出来ます。
すなわち、上部消化管からの出血の際には、消化液のために変性して検出し難くなるために、 下部消化管からの出血を特異的に検出出来るために、大腸癌の早期診断やスクリーニングに有用であるとして広く用いられるようになりました。
この方法は、極めて簡便でありますが、早期大腸癌の診断には必ずしも適切ではありません。 本来、大腸癌において、出血とは早期癌の所見ではなく、進行癌の所見であるからです。 また、一度のみの検査で陰性であっても、たまたま出血していない場合や、便標本の中で血液が含まれていない部分を検査する場合があるためです。 そのため、少なくとも連続2日間の便について検査する事が必要です。

免疫学的便潜血反応は、大腸での出血を検出していると考えられますが、大腸癌以外にも大腸ポリープ、大腸炎、痔疾、月経血混入などで陽性に出る場合がありますから注意が必要です。

2.大腸癌検診

大腸癌検診は下記の手順ですすめられます。

対象年齢
40歳以上の男女
検診間隔
1回/年
スクリーニング
免疫学的便潜血反応、2日法
精密検査
全大腸内視鏡検査、またはS状結腸内視鏡+注腸X線検査

3.免疫学的便潜血反応によるスクりーにング法での大腸癌検出率

平成7年度における徳島県総合検診センターが実施した大腸癌検診の成績を示します。

1) スクリーニング:免疫学的便潜血反応、2日法
受診者数
21,480名
便潜血反応陰性者数
19,998名(93.1%)
要精検者数
1,482名(6.9%)
2) 精密検査受診率
要精密検査数
1,482名
精密検査受診者数
1,019名
精密検査受診率
68.8%
3) 精密検査成績
所見例数%
1,019100.0
異常なし41740.9
大腸癌(うち早期癌)373.6
大腸癌疑い10.1
大腸ポリープ腺腫26726.2
非腺腫595.8
不明706.9
その他の疾患17116.8

以上から、免疫学的便潜血反応(2日法)を用いた集団検診における大腸癌発見率は下表の如くなる。

集団検診受診者全例中における大腸癌発見率0.18%
精密検査受診者における大腸癌発見率3.7%

4.参考文献

  1. 伊藤機一: 便潜血反応、河合忠、橋本信也編:臨床検査のABC、日本医師会雑誌、臨時増刊、Vol.112、No.8、平成6年
  2. 徳島県総合健診センター: 事業報告、平成6年度

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