CT/MRIの読み方  その1 (単純CT編)

成美会 鈴江病院 脳神経外科 七條文雄

                 作成日:2004/9/23 → 最終更新日:2012/6/26

このページの内容は、徳島県理学療法士会広報誌『酸橘(すだち)』通巻23号 p.2-9, 2004. に掲載されたものです。

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はじめに

 脳血管障害を中心とした脳のCT/MRIを読影するには、脳の基本的解剖・生理を理解し、かつ、個々の症例での神経症状を把握していることが、重要である。したがって、本稿では、脳の基本的解剖・生理、および脳血管障害の基礎知識を含めて、CT/MRIの読影法のコツを解説する。

1. 脳の基本的解剖と生理

1) 脳の解剖と機能

 中枢神経系の解剖と機能を簡単に解説すると、人間としての思考と行動を司る大脳、運動機能の調節機能を持つ小脳(位置的にはうなじ部の髪の生え際に親指があたるようにして後頭部に手を当てたときの、その手の直下全体が小脳の部位に相当)、意識と生命の維持に関与する脳幹がある。さらに、脳幹は上から中脳延髄などで構成される(図1)。

2) 脳の右は左、左は右

 図2のごとく、皮質脊髄路(錐体路)は延髄にある錐体交叉で交差しており、大脳の障害では、麻痺は対側に出現する。すわなち、右の大脳障害で、左半身の麻痺、左の大脳障害で右半身の麻痺が出現する。

図1:脳の解剖と機能

図2:脳の右は左、左は右の法則


3) 脳の前は運動、後は知覚

 中心溝より前は前頭葉と呼ばれ、運動と全体的統合(思考と制御)に関与する。中心溝より後には種々の感覚野が存在する。すなわち、頭頂葉は、体性感覚と知覚系の情報分析に関与し、後頭葉は視覚に関与、側頭葉は聴覚・嗅覚・記憶などに関与する(図3)。

図3:脳の機能分布

4) 右で歌って、左で喋る

 右利きの方では、言語野は左大脳半球に存在することがほとんどで、歌や空間認識の中枢は逆に右大脳半球に存在する。この様な場合、左大脳半球が優位側と呼ばれ、右大脳半球は非優位側と呼ばれる。
 図4は、大脳を上から見た模式図で、中心溝と大脳縦裂により、前後左右に4分割した機能を図示している。

図4:大脳の機能4分割

5) 脳の上は下、下は上

 図5上に大脳皮質の第1次運動野から内包後脚を経由する皮質脊髄路の経路を図示している。大脳皮質では、正中上方に下肢を支配する領域が存在し(前大脳動脈の灌流域に相当)、外側下方には上肢や顔面の運動を支配する領域が分布している(中大脳動脈の灌流域に相当)。<脳の上は下、下は上>
 図5下には内包後脚部位での障害様式を図示している。視床出血では、血腫が外側へ進展すると、内包後脚障害により、片麻痺が出現する。同様に被殻出血では内側への進展により、脳梗塞では、内包後脚自体に虚血巣が出現することにより、麻痺が出現する。

図5:大脳皮質運動野と内包後脚(文献1より一部改変)

6) 皮質脊髄路の経路(ワーラー変性)

 神経系は、多数のニューロンのネットワークで構成されており、個々のニューロンは、神経細胞と軸索から構成されている。この軸索が傷害されると、数時間から数日後に軸索や髄鞘は傷害部位から末梢に向かって徐々に崩壊していく。この変化はワーラー変性と呼ばれ、神経経路の同定に有用である。図6に脳梗塞(矢印部)例のMRI画像(FLAIR像)を呈示する。MRIでの高信号域(白色部)が皮質脊髄路の経路に相当する。

図6:脳梗塞とワーラー変性

7) 腫れれば細く、痩せれば太くなる脳室系

 図7は、MRIの矢状断に脳室系を投影したものである。左右の大脳の内部には、側脳室があり、正中部には、左右の視床を側壁とする第三脳室が存在する。この両者はモンロー孔(室間孔)により互いに連絡している。第三脳室は、中脳に存在する細い管(中脳水道)を介して、第四脳室へと連絡している。
 この脳室系は、ほぼ左右対称であるためにCTやMRIの横断面でも、左右対称の断面が観察される(図8)。
 脳室は、脳の内部に存在するために、脳内の圧関係で変形する。すなわち、脳内に血腫や腫瘍性病変が生ずれば、圧迫されて狭小化がみられ、かつ対側へ偏位する。脳萎縮が生ずると、脳の容積が減るために逆に脳室系は拡大する。これを標語で表すと、『腫れれば細く、痩せれば太くなる脳室系』となる。

図7: MRIの矢状断に脳室系を投影

図8:MRI画像での脳室系

8) CT/MRIでの主要組織の位置と名称

 図9では後頭蓋窩での小脳と橋の位置関係を示している。このスライスの10mm上方では中脳が観察される。中脳前方には左右の大脳脚があり、それぞれの中央部を皮質脊髄路が通過している(図10の解剖図の赤線部分)。この皮質脊髄路の中脳レベルの断面は、図6のワーラー変性においても、同部位が白く高信号で描出されていることにより確認できる。中脳の後方正中部には、中脳水道が通過している(図8, 10)。さらに、20mm上方のスライス(図11)では、左右対称に、視床、レンズ核、尾状核頭などの核がみられる。レンズ核の外側には被殻、内側には淡蒼球があり、両者を併せてレンズ核と呼ばれている。尾状核頭と被殻の間には内包前脚があり、視床と被殻の間に内包後脚が存在する。この内包後脚を皮質脊髄路が通過しているため、この部位の障害により片麻痺が生じる。図5下では、被殻出血や視床出血および内包後脚部位での脳梗塞により生ずる片麻痺の模式図を示している。また、図6では、ワーラー変性による白色の高信号域が内包後脚の部位でもみられており、この所見により、内包後脚内での皮質脊髄路の位置が推察される。

図9:橋レベルでの断面像(MRI) 

 大脳の皮質レベルでは、前方に前頭葉、後方に後頭葉、側方に側頭葉、上後方に頭頂葉があり、これらのCTやMRIでの断面の位置関係を図12に図示する。Fは前頭葉、Tは側頭葉、Oは後頭葉、Pは頭頂葉を示し、前頭葉と側頭葉の間にシルビウス裂があり、その内側に島(とう)が位置する(図12-2,3のFとTで挟まれた部分)。

図10:中脳レベルの断面像(MRI)

図11:視床レベルでの断面像(MRI)

図12:MRIでの大脳の皮質分布

2. CT画像の基本

 CTでは、放射線を利用して体の断面像が描出される。従って、CT画像上での組織の描出され方は、X線写真上で組織がどう見えるかを知っていると、簡単にCT画像の見え方が推測できる。また、逆にCT画像からも、組織の性状が推測できるようになる。
 X線写真は、組織の放射線透過度に応じて白黒の濃淡像として描出される。この代表例として、図13に、頚部と胸部のX線写真を示す。

図13:頭部側面と胸部正面のX線写真

1) 金属は何色?

 胸部写真では、ペースメーカーとそのコードが白く見えている。また、頚部写真では、義歯が白く見えている。この様に、金属は放射線を透過しにくいために、CT画像においても、金属は濃い白色として描出される。

2) 骨は何色?

 骨も金属よりは薄くなるが、やはり白く描出される。

3) 空気は何色?

 空気が存在する体の外側、および肺野、これらは共に黒く写っている。すなわち、空気は放射線を透過しやすいためにCT画像においても黒く描出される。

4) 水と血液は何色?

 次に液体成分について検討する。図14は、遠心分離器により血液を血漿成分と血液成分に分離したものと、水とを比較したものである。X線写真では、共に淡い白色に写っている。これをCTで撮影したものが、図15である。CTでは、血球成分、血漿、水の順に異なった濃度で描出されている。血球成分が白く描出されるのは、赤血球内に多くのヘモグロビン(鉄成分)があるためである。なお、通常の脳を対象としたCTの撮像条件では、水は黒色に、血液は白色に描出される(図16参照)。

図14:血液と水の比較(X線写真)

図15:血液と水の比較(CT)

5) 症例にみる水と血液

 図16は、くも膜下出血例における術前(A)と術後4ヶ月(B)のCT画像を比較したものである。くも膜下出血による血液成分は白色に、髄液は黒色に描出されている。これらを認識しやすいように、同じ写真を下段(C、D)では、血液部分を赤色に、髄液部分を青色に、脳血管攣縮により生じた脳梗塞部位を黄色に着色している。

図16:くも膜下出血例の術前と術後CT

6) 高吸収域と低吸収域

 前述してきたように、CT画像は、組織の性状により、その放射線の透過度に応じてグレイ階調の濃淡で表現される。放射線を透過しにくいものは、より白色となり、高吸収域(high density area)と表現される。逆に透過しやすいものは、より黒色となり、低吸収域(low density area)と表現される。

3. 種々のCT画像

1) 石灰化像

 組織の石灰化(カルシウムの沈着)は、頭蓋骨で代表されるように白色に描出される。同様に、正常組織の石灰化も白色に描出されることがある。
 図17は、代表的な石灰化像を示したものである。水色のリングに囲まれた高吸収域は、松果体の石灰化であり、赤色のリングで囲まれた高吸収域は側脳室内の脈絡叢の石灰化である。いずれも、正常例のおいてもよく見られる石灰化像である。

図17:CTでの石灰化像(1)

 図18は、左右の大脳基底核部の石灰化像を示したものである。この様な石灰化も程度の差はあるも正常例でもよく見られることがある。症例によっては、脳出血との鑑別が必要となることもあるが、通常は、左右対称性にみられるために、容易に判別できる。
 図19のBは、Aでみられる異常石灰化部位を赤色に着色したものである。これは頭蓋内の内頚動脈であり、強度の動脈硬化性変化によりその血管壁に石灰化をきたしている。

図18:CTでの石灰化像(2)

図19:CTでの石灰化像(3)

2) 脳出血と脳梗塞

 CT読影の応用例を図20に呈示する。いずれも強い片麻痺を有する脳卒中例のCT画像である。今までの解説が理解できていれば、A・Bいずれが出血例であるか梗塞例であるかは、容易に判定できるはずである。
 次に、どちらが急性期例で、どちらが慢性期例であろうか?
 Aが脳出血の急性期例、Bが脳梗塞の慢性期例である。脳出血では、急性期の血腫は前述のごとく白色(高吸収域)で描出される。これが慢性期になってくると血腫が吸収されて低吸収域へと変化する。脳梗塞例のCTでは、梗塞部位は約6時間以上経過すると低吸収域として描出され、時間と共により明瞭となる。
 次に、脳室の形に注目していただきたい。通常脳室の断面はほぼ左右対称となるが、Aでは、血腫側の脳室が圧排されて、脳の正中構造(第三脳室など)が血腫の反対側へ偏位している。これは、脳が腫れた急性期の所見である。Bでは、逆に梗塞側の脳室が大きくなり、正中構造も梗塞側へ偏位している。これは、脳萎縮が生じた慢性期の所見である(『腫れれば細く、痩せれば太くなる脳室系』を参照)。
 また、松果体の石灰化像がA・Bでみられ、大脳基底核部の石灰化(両側)はAでみられている(血腫との鑑別に注意!)。

図20:脳卒中例のCT画像

おわりに

 本稿では、脳の基本的解剖・生理、および、CT読影のためのCTの基礎知識を中心に解説した。今後、MRIと脳血管障害の基礎知識を解説していく予定である。

参考文献

1) 花北順哉(訳):II. 運動系. 神経局在診断―その解剖、生理、臨床―(半田肇監訳), p 39-90, 文光堂, 東京, 2000.


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