パーキンソン病の薬物療法  → 戻る

【薬物療法のポイント】: さじ加減が重要!


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ドパミン補充薬】【ドパミン放出促進薬】【ドパミン分解阻害薬】【ドパミン受容体刺激薬】【抗コリン薬】【ノルアドレナリン前駆薬

薬物療法の治療方針悪性症候群


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《重要: パーキンソン病はドパミン作働性ニューロンが20%以下になって発症しています!》


1.ドパミン補充薬  → 戻る

(商品名:ドパストン、ドパール、ドパゾール、ネオドパゾール、イーシー・ドパール、マドパー、ネオドパストン、メネシット、カルコーパ、ドパコール、パーキストン、レプリントンなど)

  ドパミンは血液脳関門を通過しないために、末梢に投与しても脳内には到達しない。ところが、ドパミンの前駆物質であるレボドパ(L-dopa)は血液脳関門を通過し、脳内でDOPA脱炭酸酵素により代謝されドパミンとなる。経口投与されたレボドパは、小腸から吸収され血中に入る。血管内には末梢性DOPA脱炭酸酵素があり、多くはここでドパミンに代謝され、脳へ到達するのは1-3%にすぎない。この様にレボドパ単剤の投与では、大量のレボドパを必要としたが、血液脳関門を通過しないDOPA脱炭酸酵素阻害剤とレボドパの合剤が開発され、これにより、レボドパの投与量を5-10分の1に減量できている。したがって、この合剤が近年のレボドパ治療の主流をなしている。なお、ビタミンB6は、DOPA脱炭酸補酵素であるためにレボドパ投与中の患者への多量のビタミンB6製剤の投与は控えるべきである。

 レボドパ投与初期の副作用としては、悪心・嘔吐・食欲不振などの消化器症状、めまい・起立性低血圧・頻脈・不整脈などの循環器症状、興奮・幻覚・妄想・抑うつ・不眠などの精神症状がみられることがある。

 長期投与の副作用としては、長期服用による薬の効果減弱、レボドパに起因する粗大な不随意運動(ジスキネジア)、効果持続時間の短縮による症状の日内変動(wearing-off現象)、突然動けなくなり、また突然回復するon-off現象、幻覚・妄想・興奮・錯乱などの精神症状などがレボドパ開始後5-10年で高頻度にみられる。これらの症状は映画『レナードの朝』で巧みに紹介されている。


2.ドパミン放出促進薬   → 戻る

(商品名:シンメトレル、アテネジン、アマゾロン、グランザート、シキタン、トーファルミン、ボイダン・D、ルシトン、ロティファミンなど)

 抗ウィルス剤として開発されたアマンタジンが、投与例から、抗パーキンソン病作用があることが発見され、近年では多くのパーキンソン病患者に使用されている。その機序はドパミン作動性ニューロンからのドパミン放出促進にあるとされている。

 副作用としては、めまい・立ちくらみ・動悸・口渇・悪心・嘔気・食欲不振・幻覚・妄想・下腿浮腫・網状皮斑・多毛・脱毛などがあげられる。アマンタジンや後述する抗コリン剤などでみられる幻覚は、特有で『小さな虫がたくさん見える』とか、『子供や人影、動物などが見える』など、主として幻視であり、薬を減量もしくは中止すると幻覚は消失する(可逆性)。


3.ドパミン分解阻害薬  → 戻る

(商品名:エフピー)

 放出されたドパミンはミトコンドリア外膜に存在するモノアミン酸化酵素(MAO)により分解される。MAO-B阻害作用があるセレギニンでは、レボドパの作用時間の延長と作用の増強効果が認められ、臨床に使用され始めている。

副作用としては、レボドパと同様の症状がみられる



4.ドパミン受容体刺激薬(ドパミンアゴニスト)  → 戻る

(商品名:ペルマックス、ベセラール、カバサール、パルキゾン、パーロデル、アップノールB、エレナント、コーパデル、デパロ、パドパリン、パーロミン、パロラクチン、プロスペリン、メーレーン、ビ・シフロール、ドミンなど)

 ドパミン受容体刺激薬は、ドパミン受容体を直接刺激してドパミンと同様の作用をすることにより抗パーキンソン病効果があるとされている。現在本邦では、ブロモクリプチン、ペルゴリド、タリペキソール、カベルゴリン、プラミペキソールなどが使用されている。

 その副作用としては、悪心・嘔吐・食欲不振などの消化器症状が強くみられ、その他、起立性低血圧・動悸・不整脈などの循環器症状、幻覚・妄想・錯乱などの精神症状が知られている。


5.抗コリン薬  → 戻る

(商品名:アーテン、トレミン、ピラミスチン、セドリーナ、ストブラン、トリフェジノン、トリヘキシン、パキソナール、パーキネス、アキネトン、タスモリン、ビカモール、アキリデン、パーキン、コリンホール、メチキサート、トリモールなど)

 黒質線条体系でのドパミン神経細胞は、線条体にある介在性アセチルコリン神経細胞を抑制する作用がある。パーキンソン病では、ドパミン神経細胞が変性しているために、相対的にアセチルコリン神経細胞の活動亢進が生じている。

 抗コリン薬は線条体に存在するアセチルコリン受容体を遮断するすることにより抗パーキンソン病作用があり、特に振戦や流涎の目立つ患者に用いられる。

 副作用としては、口渇が顕著にみられ、その他、便秘、悪心、嘔吐、食欲不振、頻脈、動悸、ジスキネジア(特に口舌)、幻視、せん妄、錯乱、注意力・記銘力の低下、排尿困難などがみられる。高齢者では、抗コリン薬投与により、注意力・記銘力の低下をきたし一見認知症様の症状を呈することがあるが、抗コリン薬の中止もしくは減量で症状が回復することも知られている(可逆性変化)。したがって、高齢者への抗コリン薬の投与は控えるべきであり、投与継続例ではこのことをよく認識した上で使用すべきである。なお、緑内障、重症筋無力症、妊婦へは禁忌となっている。


6.ノルアドレナリン前駆薬  → 戻る

(商品名:ドプス)

 パーキンソン病の進行例では、青斑核内のノルアドレナリン作動性ニューロンも脱落し、脳内ノルアドレナリンも減量してくる。これを補うためにノルアドレナリンの前駆物質であるドロキシドパが投与される。レボドパ抵抗性のすくみ現象や姿勢反射障害、無動症、起立性低血圧に効果がみられる。

 副作用としては、悪心、嘔吐、食欲不振、便秘、血圧上昇、不整脈、動悸、四肢冷感、羞明感、排尿障害、幻覚、妄想、不随意運動などがみられる。また、症例により、パーキンソン症状の増悪がみられるものもある。


※ 薬物療法の治療方針(外科的療法の適応時期と併せて)  → 戻る

 パーキンソン病に対しレボドパは非常に有効な薬である反面、その副作用を考えるとレボドパをいつ開始するかは未だに議論の多いところである。この点に関し、日本神経学会より、パーキンソン病治療ガイドラインが作成され、インターネット上に公開されているのでこれを参照されたい。

以下にの個人的なパーキンソン病に対する薬物療法の治療方針を紹介する。

 パーキンソン病の原因は黒質のドパミンニューロンの脱落にあり、ドパミン量が正常の20%以下になるとパーキンソン病に特有の種々の神経症状を呈してくると考えられている。したがって、重要な基本概念は、『ドパミン量を20%以上にすれば、パーキンソン病の症状寛解が期待できる』点である。すなわち、決して過度にドパミン量を増量させる必要はない。このことより、レボドパ長期投与の重篤な副作用を考えると、病初期にはレボドパ以外の種々の抗パーキンソン病薬の投与が適切であろう。なお、抗コリン薬は、記銘力低下等をきたすことがあり、高齢者への投与は控えるべきである。

 一般に、レボドパの効果が減弱してきたとき、もしくはレボドパの副作用が顕著になりレボドパの維持投与が困難になった時が、外科的治療の適応時期とされている。しかし、パーキンソン病では、一度レボドパを投与し始めると、生涯にわたりレボドパの継続投与が必要となる症例がほとんどであり、この点を考慮すると、レボドパの投与開始時期を遅らせ、かつ投与量を少量に維持する目的でも、レボドパ療法に先立って外科的療法を行うことも一治療手段であり、私は主としてこの立場をとっている。Kellyら<1>も同様に、手術が奏効する症状に対しては先に定位脳手術を行い、レボドパの使用は温存すべきと述べている。


※ 悪性症候群   → 戻る

 抗パーキンソン病薬の中断により、悪性症候群が発症することがある。この頻度は稀ではあるが、一度悪性症候群になるとその死亡率は約10%といわれており、パーキンソン病の薬物療法を行う上で常に念頭においておく必要がある。近年、久野11)により、抗パーキンソン薬の中断を伴うことなく発症する悪性症候群も報告されており、さらに注意を要する。

 症状としては、高熱、意識障害、振戦、筋強直、発汗、血圧変動、頻脈、頻呼吸、尿閉、流涎などがあり、診断は、特有の臨床症状と、血清CKの異常上昇、GOT・GPT・LDH・BUNなどの上昇、白血球の増加などによりなされる。

 治療はダントロレンナトリウムの静脈内投与が有効である。


【参考文献】

<1> Kelly P.J. and Gillingham F.J.: The long-term results of stereotaxic surgery and L-dopa therapy in patients with Parkinson's disease. A 10-year follow-up study. J Neurosur, 53: 332-7 , 1980.


【参考リンク集】

・ パーキンソン病治療ガイドライン (日本神経学会提供)

・ レナードの朝 (独身社会人映画ファンメーリングリスト提供)