以前に来たときから、目を付けていたのだが、結局はここしかなかったのだ。
途中、「熊谷寺」の西1kmほどのところに、「熊谷直実ゆかりの寺」の標識を見つけたので、寄り道してみた。真正面から写真を撮ったのだが、刈田越しの遠景からのほうが良かったかな。
蓮生寺、れんしょうじと読むか、れんせいじと読むかわからない。平家物語の福原一ノ谷の合戦の折り、東国の武将、熊谷直実(くまがいなおざね)は、平敦盛(たいらのあつもり)を討ち取った。戦後、そのことを哀れみ、出家して、蓮生という法師になって、諸国を行脚したと、謡曲「敦盛」にある。
〜これは武蔵の国の住人、熊谷次郎直実出家し、蓮生法師と申す者にて候。
さてもひととせ津の国一の谷にて、平家の一門無冠の敦盛を手にかけ申しこと、
あまりにいたわしく存じ候いて、黒谷の法然上人の御弟子となり、諸国をめぐり候〜
人っ子一人おらず、うち捨てられたような田舎のお寺。簡素な鐘楼門をくぐると、正面の本堂だけ。庫裏は銅板を巻いてはいるが、草葺きの小さな建物。門の横の真新しい石碑と、境内の墓にわずかに表示されているだけで、詳しい内容はわからない。札所が「くまだにじ」であることから、このあたり一帯に、熊谷直実の痕跡が有ったのかも知れない。池田の方へ行くと、熊谷(くまがい)という姓があるから、その子孫が阿波国に封土を貰って土着したとも考えられる。
本堂の大屋根は最近に修理されたようだが、柱などの木材部の痛みが激しい。本堂には賽銭箱さえもなく、修理費用なども近隣の檀家が捻出しているのだろうから、小さな村では、一時に集められる金額も限りがあるはずだ。ところが、すぐ近くの札所では、本堂や他の建物を、次々と新築したり改築したりして、古風な寂びた情景が無くなっていくのは寂しいことだ。札所になるとならないとの違いで、こうも変わる物か。
本殿で納経を納めるけんちゃん。右端、奥にわずかだが見えるのが、十一面観音を安置した本堂である。あと、さらに右手に太子堂がある。寺歴によると、古くは山岳仏教の道場として栄えたが、戦国時代に、砦となり、戦火によって消失したものを江戸時代に再建したようだ。
帰りに、農村レストランで遅い昼食を取った後、帰路を取った。途中、山口というところに大学の時の後輩がおり、造り酒屋を営んでいるので、懐かしさと、今夜の酒が欠品していることもあり、立ち寄った。
我らが大学の仲間が二十名ほどで、仲良くしていたのだが、その中でただ一人下戸がいて、そいつが酒屋なのだから、世の中はおもしろい。しかも、その逆の大酒のみが、けんちゃんときたもんだ。お薦めを聞いたのだけれど、結局、私のように自分の舌にこだわる者は、人の意見なんて無用だから、上から順番に四本購入した。さらに春の新酒の時は、絞り立てがあるのだそうな。
一番左端の吟醸原酒¥2900也から早速、今夜の夕飯時に頂いたが、封を開けたとたんに、芳醇な香りが広がり、飲んでも濃厚な、コメを意識させる味わいの酒で、しかも、濃厚さに変なクセがないから、飲みやすい。ただ、すき焼きのような、濃い味の料理には、味が濃すぎて合わないかも知れない。酒だけで飲むならこれはいける。入鶴はもっと淡泊と思っていたが、どうしてどうして、こんな酒も造っているのだ。これなら近所の酒にうるさい兄ちゃんでも納得すると思い、あと八合ほどしか残ってないが、先日のハマチの返礼に、さっそく回した。
この寺のすぐ横に、宇志比古神社がある。この本殿が、桃山期の建築物らしい。
建物自体は、銅板葺きだしそんなに古い感じがしないでもないが、建築様式が古いのだそうな。屋根裏の梁の構造が少し違う、と何かで読んだような気がする。(間違っていたら、ご教示下さい)
・・・今年はどうも、アジとは縁がないらしい。鳴門の釣り場を探索してみたが、どこにも釣れている雰囲気が見あたらない。時間帯もあるのだろうが、こちらも時間帯があって、そちらのお魚ちゃんの思うようにはいかないって。・・・要は釣れなかったってこと。
頂上付近に駐車場があり、そこから1kmほど山頂を迂回するように山道が付いていて、写真のように紅葉が楽しめる。高度が1100mほどあり、ちょうど見頃であった。
行き着いた先に、高越寺がある。右側が高越大権現をまつる本堂である。山頂付近は、青空が見えたり、雲が急に飛んできたりして、デジカメには条件が悪い。
なんとこれは、昔の消火ポンプなのだ。鉄製の本体に水を居れて、棒の両端に付いた人が、交互に押し続けると、向こう側にある出口に取り付けたホースから、水が勢い良く(?)飛び出すという仕掛けだ。電気などの動力源が無かった時代の道具のなれの果てだ。保存する価値はあると思うのだが、来るたびに、端へ端へと追いやられて、朽ちるにまかせている。
夜は、HP友達のKechiKechi
Classicsの林さんが仕事で徳島に来られると言うので、初対面なのだけれど、酒を飲みながら、音楽談義を楽しんだ。貴重な情報をありがとうございました。
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