ジャケットに見る名画

・・・・・・・・レコード芸術誌にムーサの贈り物という連載がある。自分のコレクションのジャケットの中にもあるはずだ。今まで気付かなかっただけなのだ。                             

 
コロー    モルトフォンテーヌの思いで
           Romantishe Hornkonzerte 
   ウェーバー     コンチェルティーノ Op45 
   ロルツィング    コンツェルトシュテュック 変ホ長調 
   サンサーンス    コンツェルトシュテュック ヘ短調 Op94 
   シューマン      コンツェルトシュテュック ヘ長調 Op86 

          ペーター・ダム(Hr) 
          ジークフリート・クルツ  ドレスデンシュタッツカペレ 
               BERLIN Classics  0093242BC           

                               
 コロー(1796-1875) フランス19世紀の風景画家。裕福な商家に生まれる。画風が大衆の人気を得た。バルビゾン派の親父的存在でドーミエらの貧しい同僚の画家たちに援助した。また若い世代の印象派にも影響を与えた。
 コローは私の好きな画家の一人である。あちこちの展覧会や美術館にゆくたびに、物静かな雰囲気に心和まされる。若い女性の肖像画や 静物画もあるが、やはり風景画がいい。このモルトフォンテーヌも傑作の一つである。                   



 
ルノワール            ピアノによる娘たち      
        ドニゼッティ 
              ピアノ曲全集 Vol.2 
             Valzer 
             Sinfonia etc.  

                ピエトロ スパーダ(Pf) 

             ARTS 2513  

 ルノワール(1841−1919)印象派の代表的画家。華麗な色彩を用いた裸婦像、人物画、風景画に多数の傑作がある。
 この絵は先年、オルセー美術館展で日本へ来ていた。私は東京出張の際、わずかな時間を割いて見に行った。人も多かったりして、この絵だけしか見る時間がなかった。PCの画面では色が出ていないが、背景のカーテンのグリーンがすばらしい色合いだったような記憶がある。ルノワール独特の筆のタッチなども、実物を見なければわからない。
 スパーダのこの全集は三枚からなり、他の二枚は、「ピアノによるロレル・イヴォンヌとクリスティーヌ」「テラスにて」の部分が採用されている。
 スパーダとドニゼッティのピアノ全集については、また書く機会があるだろう。

 後日(99年10月)京都にてオランジュリー美術館展があり、見に行った。メインはこの「ピアノによる少女」の別バージョンであった。ルノワールは同じ主題で何枚か書いているのだ。構図とか色の使い方、タッチなどが違っており、こちらのが最初に描かれたスケッチである。当然ではあろうがオルセーのものが断然優れている。同展には、上記の「ピアノによるロレル・・・」が出展されており、こちらの方が良かった。



 
ダヴィッド            書斎のナポレオン
               ベートーベン 
     交響曲第3番<エロイカ> 

             ベーラ・ドラホシュ指揮 
             ニコラウス・エステルハージ・シンフォニア 

             NAXOS 8.553475                                 

 以外や以外、ナポレオンのジャケットを探したが、なかなか無いのもです。エロイカのディスクは何十枚もあるが、ほとんど全部爺さんの写真ばかりです。やっと見つけた一枚が最新版のNAXOS盤。演奏は、威勢はいいが超小粒。最初に買った<田園>がすがすがしかったので、つられて買ったが、フルヴェンやクナとは比較の対象外。しかしこの団体は小さな曲をやらせると、健康的で清潔感あるところが私はすきだ。
 ナポレオンの絵はダヴィッドとグロが何枚か書いている。鳴門の大塚美術館に原寸大のイミテーションがある。<皇帝ナポレオン1世と皇后ジョセフィーヌの戴冠>は壮大である。(あくまでイミテーションであるが)他にダヴィッドには<サン=ベルナール峠を越えるナポレオン>や未完成の<ボナパルト>がある。グロには<アルコル橋のナポレオン>、<ピラミッドの戦いを前に演説するボナパルト>、<ヤッファのペスト患者を訪れるボナパルト>、<エロの戦場のナポレオン>等がある。



 
フュースリ      夢魔        
   フランツ・イグナッツ・ベック 
    交響曲作品3−3,4,5 

           ミヒャエル・シュナイダー指揮 
           ラ・スタジオーネ・フランクフルト 

              CPO 999 39−2

 ジャケットを見て、このなまめかしい絵は見たことあるぞと思って調べてみたら、フューリス(1741−1825)だった。近代か現代の作品だと
思いこんでいた。結構古い人だ。チューリッヒに生まれ、イタリアでミケランジェロの影響を受けつつ学び、イギリスで活躍した。強迫観念や幻想性を表したロマン主義的な作品が多い。<夢魔>には4つのヴァージョンがある。他に<タイタニアとボトム>、<3人の魔女>、<大洪水の幻想>、<漁師夫妻の前に現れたウンディーネ>などがある。
 ベック(1734−1809)については、全く知らなかった。生きた時代はほとんどハイドンと同じである。マンハイムに生まれ、勉強し、フランスへ行って活躍した。この交響曲Op3はハイドンの中期の作品にに相当するか?Op3−3の第1楽章は冒頭から大変に熱い。どの作品も無名のままで捨てておくには惜しい気がする。



 
ヴィルヘルム・ヘンゼル   
              ファニー・メンデルスゾーン        
        
      歌曲集 

            ラン・ラオ(ソプラノ) 
            ミカエラ・ゲリウス(ピアノ) 

                   ARTE NOVA BVCE9721             
       

  とにかく美人に描かれている。それも当然で、才色兼備の大金持ちのお嬢さんを嫁さんにもらったら、宮廷画家のヘンゼルとしては、有頂天であっただろう。ファニーは有名なフェリックスの姉で、作曲の才能も大したモノであった。が、親兄弟は、その事を嫌ったらしい。ところが、婿さんのヘンゼルは理解ある人で、作曲を勧めたので、室内楽、ピアノ曲、声楽曲等に約400曲ほどを残している。
 ヴィルヘルム・ヘンゼルは、画家としては一流では無かったらしく、資料が見あたらなかった。



 
モネ    庭の婦人   
              ファランク                                  
                                         
     交響曲第1番ハ短調 Op32                                   交響曲第3番ト短調 Op36 

       ヨハネス・ゴリツキ指揮 
       ハノーヴァー・ラジオ・フィルハーモニー 

             CPO 999 603−2  
             

 古い記憶がよみがえってきた。30年ほど前、京都まで見に出かけていった。ソヴィエト名品展かなにかで、エルミタージュ美術館の収蔵品である。作品は、モネの若い頃で、生活に困って、おばのうちに転がり込んでいた時の、その庭にいるおばを描いた物である。



 
ターナー   カルタゴを建設するディド   
              シュポアー 

        複弦楽四重奏曲第3番 ホ短調 Op.87 
        複弦楽四重奏曲第4番 ト短調 Op.136 

               アカデミー・セントマーチン・イン・ザ・フィールド室内アンサンブル 

                        hyperion CDA66142               

 オッ!ターナーだ!最近はシュポアーにも少し凝っているので、手にしたが、ジャケットがターナーであることの方がより感動した。本末転倒のはなはだしい。シュポアーを、ベートーベンとメンデルスゾーンを繋ぐミッシングリンクの間に設定したいのだが、残念ながら、モーツァルトの流れを汲んでいるように思える。例えば、この複弦楽四重奏曲を聴くと、それがよくわかる。曲想は流麗なロマン派的であるのだが、形式的には古典派である。弦楽四重奏団を二組使っているから、響きはさぞ重たかろうと思うのだが、いかにもかろやかだ。メンデルスゾーンのものも、同様だから、肩が凝らなくて、気軽に聴くことが出来る。
 ターナー(1775−1851)は、イギリスの風景画家。歴史画や山岳画も書いているようだが、私は海洋画のターナーしか知らない。最も好きなのは<解体のため錨泊地に向かう戦艦テメレール>だ。これも、<The Virturoso Clarinet>ヘンク・ド・グラーフ(Cl)&シューベルトコンソートのジャケットに使われていて、トラファルガーを戦ったネルソン麾下の戦艦(戦列艦 Ships of line)は帆船であったが、時代の変遷で、蒸気船(外輪船)に、まるで雌牛が屠殺場に引かれていくように、曳航されていく構図である。もっとも、この曳船自体が今から見ると、大変な代物で、例えば、ペリーが浦賀にやってきたときの黒船が、外輪船であった。スクリュー推進になるのは、ずっと後のようだ。帆船と蒸気船の軍艦が入り交じった海洋小説には、スチュアート著<黒海シリーズ>(光人社)がある。
 表題の<カルタゴを建設するディド>について。ヴェルギリウス著<アエネーイス>によれば、トロヤの部将アイネイアースは、オデッセイ(ユリシーズ)の奇計トロヤの木馬によって落城したことにより、イタリヤのローマに新トロヤを建設すべく出航する。その途中で、カルタゴに立ち寄る。カルタゴは、テュロス国の内紛を逃れたディドによって建設されつつある。ここで二人は相愛の仲になり、ディドとしては、アイネイアースに国王になって欲しかったのだが、アイネイアースは本来の目的のために脱出し、ローマ建国を果たす。一方、取り残されたディドは悲嘆のあまり自殺する。(これがポエニ戦争の遠因)。



 
作者不詳、タイトル不明
ロマンティック コンチェルトシュツック

   メンデルスゾーン クラリネットとバセットホルンのためのコンチェルトシュツック No1 Op113
              クラリネットとバセットホルンのためのコンチェルトシュツック No2 Op114
   フランツ・クラーマー 2つのクラリネットのためのコンチェルトシュツック
   カール・ベールマン 2つのクラリネットのためのコンチェルトシュツック

          クレッカー(Cl)、ヴァンデル(Cl、Bassettforn)
          タマヨ指揮 南西ドイツ放送交響楽団

                 koch schwann

 名画の初志からは外れていると思うが、それでもここに入れたいほど気に入っってしまった。このCDを買うきっかけになったのは、大学から帰省してきた娘が、メンデルスゾーンは無いかと言って、かっぱらわれてしまったために、後がまとして購入したのだ。演奏者の名前は忘れてしまったが、古楽器で演奏していたものでお気に入りだったのに。しかしながらその後がまが、クラリネットがクレッカーときたものだから、これもお気に入りになってしまった。メンデルスゾーンの曲は、もともとはピアノ伴奏なのだが、こちらはオケ伴である。
 このジャケット、ちょっと変わっているが、これで表紙に間違いないのだ。何が変わっているかというと、タイトルとか演奏者が一目でわからない。よくよく目を凝らすと、右上の黒板のようなものに曲目が書かれている。クラリネットの曲だとはすぐにわかるのだがそれからは?何の目的のために描かれたのだろう。楽器はキーのない古いタイプのものである。
 クラーマーはピアノ協奏曲で有名なヨハン・クラーマーのいとこに当たる。ミュンヘン宮廷のフルート奏者であり、ウィンターに師事していた。
 メンデルスゾーンとクラリネット奏者でもあったベールマン親子は親交を結んでおり、Op113とOp114はそれぞれに献呈されている。
 

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