吉野・奈良の旅


 観心寺を出て、次の目的地は叡福寺。聖徳太子の陵墓があるところ。このあたりは、近つ明日香とよばれていたらしい。明日香川なども流れている。推古天皇や用明天皇の御陵も近い。
 
 古道、竹ノ内街道は、一度通ってみたいと思っていたのだが、この叡福寺の前の道がそうなので、大和側にぬける。二上山を横目に見ながら、山を下りたところに、当麻寺がある。
 二つの塔がそろっている残っている寺は、日本国内にはこの当麻寺だけ。塔などと言う物は、近づいてみるほど、たわいもない物だが、遠くから見ると、二つ並んだ塔は、いい景観だ。

 道を急ぐ。「泊まりはどこにしよう?」「吉野にはホテルがいっぱいある」「きまり」

 晩、酒を食らった後、「散歩にいこう」「プロ野球がいい」。仕方がないので、ホテルの下駄を履いて蔵王道まで夜の散策。オフなので、遅い時間でもないのに、人っ子一人いない。酒を食らっていなかったら、心細くて、とても歩けたものでない。物の怪にでも襲われたらどうする?ライトアップされた蔵王堂には威圧される。

 翌朝、蔵王堂、吉水神社、如意輪寺と巡る。義経と太平記の世界。お目当ては、吉水神社の正成の腹巻。どうも時代が合わないような気がしないでもない。備え付けの感想ノートをめくっていると、ずいぶん小さいなどと書いてあった。解ってないんだから、もう。学生の時分に来たときは、雪が残っていたことを、突然思い出した。
 如意輪寺は、正成の長男、楠正行(まさつら)色。宝物館内に、古い扉があって、正行の歌が刻まれている。他に鎧の破片など。
 南朝二代目の後村上天皇の命で、北朝足利尊氏を討つべく、正行が出撃するにあたって、決死の思いを、ここに鏃でもって、刻んでいった。
       返ラジト 兼ネテ思ヘバ 梓弓 ナキ数ニイル 名ヲゾトドムル
 高師直(こうのもろなお)麾下の大軍と、河内四条畷で激突したが、例えれば、読売ジャイアンツとそのあたりの草野球チームが後楽園で試合をするようなもので、あえなく玉砕。それどころか、本拠地の吉野まで攻め込まれて、蔵王堂などすべてが炎上。南朝はさらに山奥へ逃げ回るばかり。
 後醍醐天皇の御陵も、この如意輪寺にある。
 
吉野山を下りてから、壬申の乱の時に、大海人皇子が逼塞した滝の宮を探索。遺跡があるわけでもないので(石碑が建っている)、アバウトに納得。古代の吉野は、前夜泊まった吉野山ではなくて、10キロほど上流の、この滝の宮がそうであったようだ。万葉集に出てくるのもこちらだから、そのつもりで読まないと。象山(きさやま)とかなつみの川とか夢のわだ等々。
 滝の宮から、大海人皇子の逃避道の逆走を試みる。が、ろくな地図を持っていなかったので、悪戦苦闘の上、芋峠を越えて石舞台に到達。古代の本街道だったかも知れないが、簡易舗装されてはいるものの、車での対向はやばい。
 明日香では、車から出つもりが無かったが、友人が石舞台を見て行きたいというので、オフだからがらがらの駐車場で料金を払うのもしゃくだから、一人見学してもらって、少し広いところで待機していた。少し走って、最近発掘された庭園跡はどこなのかとうろついたが、どうにも、車からでるきがしないので、結局わからずじまい。 
 
 しばらく走ると、山田寺跡の横を通り過ぎつつ、今回第2の目的地、聖林寺に到達。明日香からは、ほんとうに近いんだ、車だったら。オフだから、駐車料はただ。拝観に来る人もほとんどいない。
 こじんまりしたと言うよりも、ほんとに小さなお寺さん。サルスベリの花が崖際の築地壁からのぞいている。こじんまりした門。そこを入ると、狭い庭だが、いろんな花木がいっぱい植えられているて、手入れが行き届いている。その時期がくれば、きれいなだろう。大和平野が一望できる。三輪山、倭姫や景行陵などの巨大古墳。
 目的は十一面観音。すばらしい。すばらしい。実にすばらしい。(聖林寺のホームページで閲覧できる、メールも返していただいた)
 聖林寺から山の中へ突入すると、淡山神社にいたる。この山も、楓の木がいっぱい植えられていて、シーズンには、どんなに美しいことか。
この時期は、深緑にはえる丹塗りの社殿が美しい。セミの声もさわやか。としておこう。かなりな駐車場が整備されているから、きっと大勢の参拝者があるのだろうて。

 車を北に向ける。大三輪神社でトイレ休憩。地図によると、景行陵の近くに「まほろば」といううどん屋があったので、そこで昼にしようと思ったら、満席で断念。車から見ていくと、喫茶店やレストランは比較的すいているが、うどん屋はどこもいっぱいだ。どうしてなの?
 結局昼抜きで、石上(いそのかみ)神社に到着。参拝して、土産コーナーで写真集などを見ていると、宝物は奈良国立博物館に、という記述があったので、そこそこに、奈良へ!
 駐車場には一苦労したが、奈良公園。友人にはわかってもらえないが、この雰囲気が大好き。一面の芝生。そこそこに生えている松の木。鹿の群とそのこふん。古い建物、建物。五重の塔。そして、国立博物館。しかも、この時期には、人が少ない。
 博物館本館内、仏像の山、しかもほとんどの展示物が、国宝か重文の表示が付いている。嬉しい反面、極度の疲労を覚える。鑑賞疲れというやつだ。そこそこにしなければ。体力の消耗が激しい。
 新館へ移動。企画展と、台風で破損した室生寺のひっこし展をやっていた。
 今回の小旅行で、見た国宝は数十点に上るはず。重文はいくつになるやら。
 一路帰途に・・・・
 
 

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