重金属と健康・環境



市販鯨肉中の水銀および有機塩素系化合物の分析

日本沿岸鯨類の体内には水銀やPCB類が高濃度で蓄積されている。赤身肉の湿重量当たりの成分濃度は、総水銀が9.48+-13.9 ppm,メチル水銀が5.6+-5.94ppmを示し、魚介類の暫定基準値の約20倍であった。また赤身肉のPCB類は0.18+-0.14 ppmであった。
文献:原口ら、第4回日本内分泌撹乱化学物質学会研究発表要旨集、437 (2001). なお、この研究発表に関する日刊工業新聞記事では、「イルカの内臓肉加工食品 水銀、基準値の5000倍」と紹介されている。


捕食動物へのカドミウム源としての被食動物の腸とその内容の重要性

カドミウム汚染食を与えたネズミでは、腸(と内容物)と腎臓は蓄積したカドミウムのほとんどを含み、全身体負荷への著しい寄与因子であった。 注、ホタテ貝の中腸腺はカドミウムを含んでいるので、中腸腺をヒトが食べるとカドミウムを体内に取り込むことになる。
文献:Walker et al, Environ Toxicol Chem, 21, 76-80 (2002).


喫煙からのカドミウム吸収

杉田らは、タバコの葉に含まれるカドミウムの量を検討し、日本人がタバコから吸収するカドミウムの量を計算している。 喫煙により摂取されるカドミウムの平均量は、0.89-1.78 マイクロg/日と計算されている。 この値は、消化管で吸収されるカドミウム量と比べて小さくはなかった。 日本産のタバコに含まれるカドミウム量は外国産のタバコと比べて多く、日本の土壌のカドミウム汚染が進行していることが推察される。
文献:杉田ら(東邦大学医学部)、Environ Health Prev Med, 6, 154-259 (2001).


ドイツ環境調査 成人における血中カドミウム濃度の一次予測因子 最も重要な因子は喫煙

ドイツを代表する環境調査の一環として、25ー69歳の被験者の血中カドミウム濃度が測定された。 人口統計、家庭及び職業、環境暴露、喫煙などの150変数について多変量回帰分析が行われた。 喫煙本数及び生物学的半減期に従ったカドミウム濃度の減少を考慮した数学モデルを用いて、 最も重要な予測因子が喫煙習慣であることを確認している。
文献:Hoffmann et al, Arch Environ Health, 56, 374-379 (2001).


米中のカドミウム濃度と神通川流域における死亡率との関係

石原らは、神通川流域の2100名の住民に対するカドミウム汚染の影響を継続監視している。米中のカドミウム濃度と腎障害との間には密接な相関があり、米中カドミウム濃度が高い地域ではカドミウムによる腎障害が死亡率の増加に寄与すると考えられる。
文献:石原ら(千葉大・医)、Toxicology, 163, 23-28 (2001).


富山のカドミウム汚染地域の男性住民の腎尿細管機能不全

甲斐らは、汚染した水田土を置換した後の、米に由来するカドミウム汚染の程度の変化を、富山のカドミウム汚染地域に住む男性住民の尿中カドミウム排泄を11年間分析している。カドミウム排泄量は、11年間で7.9-9.5pg/gクレアチニンから6.9-6.8pg/gクレアチニンに低下した。カドミウムの土壌汚染は、水田土を置換することにより、優位に低下することが確認された。また、カドミウムが誘発する腎尿細管機能不全を診断し、カドミウム摂取量との関連も検討している。
文献:甲斐ら(富山医科薬科大)、J Epidemiol, 11, 180-189 (2001).


ベトナムにおける地下水と飲用水のヒ素汚染 ヒトの健康への脅威

ハノイ市内と周辺農村地域でヒ素汚染を調査した。ヒ素濃度は、市内の小さな管井では1-3050マイクロg・L(市内平均159マイクロg・Lであり、市内高濃度汚染地では430マイクロg・Lであった。曝気と砂ろ過により25-91マイクロg・Lに低下していたが、50%が国の規制値より高かった。ヒ素と鉄の含有量は相関しており、ヒ素は鉄オキシハイドロキサイドと結合していて、鉄の還元溶離によって地下水中に入っていた。未処理地下水を飲用する数百万人に慢性ヒ素中毒の可能性がある。
文献:Berg et al, Environ Sci Technol, 35, 2621-2626 (2001).